エセー3

私は精神分析家になりたい。しかし、これは妄想かもしれない。病気が生み出した妄想なのだ。最近、シュレーバーというパラノイア妄想の神経症の人が書いた『ある神経病者の回想録』という本とフロイトの『あるヒステリー患者の分析の断片』を読むようになって、自分が少し誇大妄想をいだくようになっているということを自覚するようになってきた。とくにシュレーバーの症例はグロテスクなのと書き方が実に細かいので「自己を見つめる」ことにはいい教科書だと思っている。しかし、京都の大谷大学時代に相談室の臨床心理士さんに「こういう症例は自分と距離をおいて読んだ方が良いよ」とアドバイスをいただいたことがあるので気をつけねばならない。木村敏先生の著作に関心がある。沼津市立図書館には木村敏先生の著作が少ない。だから静岡県立中央図書館にいってかりてみたいと思う。その著作をかりて統合失調症の当事者としてしたためることができたらうれしい。

追記

 私は以上の文章を臨床心理技官のデイケアスタッフに読んでいただいた。そのところ誇大妄想ではないと言われたのでほっとした。しかし精神分析は大学で学んでも少ししかやらないということと大学にはいったとして自分が関心のないことも学ばなければならないことを伝えられやはりと思った。そして臨床で学びたいのか教養として学びたいのか訊かれたので教養として学びたいと伝えたところセミナーのほうがいいとも伝えられた。心理の世界で実践の現場で使えるようになるには「最低6年間」学ばなければならないとも伝えられたのでうーんと考えこんでしまった。やはり教養として学んだ方がいいと考えている。

 静岡県立中央図書館にでかけた。そこで『木村敏著作集1 初期自己論・分裂病論』と『フロイトの生涯』、『ティンデル注解ヨハネ福音書』、『エウテュプロン/ソクラテスの弁明/クリトン』西尾浩二・朴一功(おふたりとも大谷大学の先生)訳をかりた。木村敏先生の著作はビンスヴァンガーの『精神分裂病Ⅰ・Ⅱ』の翻訳に触発された文章が多い。とくに初期自己論などは。まだ読み途中なので早くも決断的なことを特筆することはできないが、「離人症現象学」を読み終えてそう感じた。『エウティプロン/ソクラテスの弁明/クリトン』は恩師である朴一功教授と大谷大学講師西尾浩二先生の力作的な訳業だ。論理的思考にうとい私に慈雨のごとく天啓を与える書だと確信している。『フロイトの生涯』は今読んでいるアーヴィング・ストーンの『小説フロイト』の種本となったであろう本だ。フロイトの生涯を微に入り際にわたり描いている。