エセー5

古典ギリシア語を学ぶために机にある書棚を整理した。プラトンの対話篇とホメロスの『イリアス』と『オデュッセイア』。ドイツ語の辞書をどかして、フランス語の辞書とリドル&スコットの希英辞典を置いた。リドル&スコットの希英辞典は腹をくくって通読していきたい。ミミズがのたくった「暗号」を解読していくのだ。ほかにも、『アリストテレス全集17詩学アテナイ人の国制・断片集』を置いた。この版は今道友信先生が「詩学」を訳出しておられるが、現在出回っている版だと、朴一功先生が「詩学」を訳出なさっている。「アテナイ人の国制」は村川堅太郎先生が訳出されているが、プラトンの『エウテュプロン/ソクラテスの弁明/クリトン』(京都大学学術出版会)の重要文献とされているのでぼっちらぼっちら読んでいきたい。また、モンテーニュシェイクスピアの『ハムレット』や『マクベス』。ソフォクレスの『オイディプス王』などの悲劇にも私は「魅了」されている。しかし、目下のところは健康管理とプラトン哲学に集中していきたい。本当は西洋古典哲学のエキスパートである朴一功先生や納富信留先生のようになりたいが、ハードルが高すぎる。納富信留先生は『ソフィストは誰か?』のなかでソフィストつまり、弁論によってお金をもらっている人々がどのような生き様をめぐってきたのかを鋭く考察している。私が大学時代、朴一功先生に「教育についてかんがえたいのですが……。」と問うたところ、「『プロタゴラス』を読むといい」とアドバイスを頂いた。プロタゴラスソフィストだ。ソクラテスプロタゴラスの「知ったかぶり」から解放すべく、ソクラテス問答法によって論駁していく。私も「知ったかぶり」や「知っていると思い込んでいる」ことが多い。岸見一郎先生はソクラテス問答法ができる経験を活かして、アドラー心理学に基づいたカウンセリングを行っている。学者のことばかり書いていて迷宮に入りこんだ感があるが、池上哲司先生は「感情をロゴス化しろ!」と授業中生徒たちに訴えていた。そして、私にも文筆業を生業としていきたいという訴えに対して「モンテーニュの『エセー』を読むといい」とアドバイスを下さった。市立図書館でモンテーニュの『エセー』をかりた。モンテーニュは自宅の塔にひきこもって文筆活動を行っていった。ひきこもって鬱になったが、「書くこと」を通して鬱を緩和していった。エセーは「私」のことを見つめる内容になっている。私にとってはラテン文学の引用が凄まじく多く、とっつきにくい。学生時代まともに読めなかった。しかし、今になって読みかえすと「驚き」に満ち溢れており、くんでも尽きない源泉であることが身にしみてわかってきた。