母の悩みを聴いて

 ぼくはプラトンの対話篇の中でも大著とされる『国家』を再読している。『国家』の中には「洞窟の比喩」という譬え話がある。そのお話は、ある人々が洞窟の中でくらしていました。その後ろには炎が焚かれており、影絵のお芝居が上演されていました。しかし、洞窟の外では素晴らしい世界、現実の世界が広がっていました。洞窟の中の人々は現実の世界にでても影絵の世界が本当だと「思い込んで」しまっており、洞窟の外の世界に出ることはありませんでした。このようなお話がプラトンの『国家』では比喩として描かれている。

 母は職場の人間関係になやんでいた。職場の社員や同僚に「自分は嫌われている」という「思い込み」から暴言や悪口を言ってしまうという。ぼくは、洞窟の比喩の話しをしたあとで「母ちゃんは洞窟の中の人々なんだよ」と言った。洗いざらい職場での被害妄想や悪口をぼくに語ったら、「お前に少し話したら楽になった」と笑顔を見せてくれた。ぼく自身も洞窟の中の人々ではない!といいきることことができないので、もっとデイケアや社会に出ることの準備づくりをぼちぼちやっていきたい。