プラトンから学んでいること

 ぼくは子どもの教育に関心がある。そのきっかけは町内の回覧板に小学生のお世話をするスタッフを募集するチラシを偶然みつけたからだ。大谷大学の哲学科に通っていた頃、倫理学・人間関係学の恩師に「教育に関心があるのですが・・・・・・。」と恐る恐る尋ねたところあっさりと「プラトンを読め」とアドバイスをいただいたことがある。初心にかえってぼくは現在、プラトンの著作をひもとくことにした。そうしたら、驚きの連続であった。「美とはなにか?」「幸福とはなにか?」「弁論術とはなにか?」という様々な問いに対してソクラテスが真摯に答えを出すのではなく、じっくりと対話者の「思い込み」を破壊していくオペラだったのである。ぼくは「知っているという思い込み」が強いのでそれをソクラテスはことごとく論破していく。ソクラテス自身は1冊も著作を書いていない。ソクラテスの弟子のプラトンソクラテスを主人公にして戯曲形式で物語を書き、著作をつぎつぎに遺していった。プラトンのすごいところは哲学用語を使わないで日常の言葉でソクラテスの言論を書いていったことだ。そうすることによって、ソクラテスと一緒に哲学の主題を考察することができるのである。 

 県立中央図書館でプラトンの著作を何冊か借りてきた。ほとんどが、大学時代「迷惑」をかけてしまった西洋哲学の教授が翻訳した著作ばかりである。ほかにも岸見一郎先生のアドラー心理学の翻訳本がある。心理学者のアドラーは子育てや非行について自身の生々しいカウンセリング体験から著作活動を行なった。そのなかでも『人生の意味の心理学』と岸見一郎先生がお書きになった『子育てのためのアドラー心理学入門』は子育てについて鋭い示唆を与える素晴らしい著作である。

 ぼくは30歳になって「社会に貢献したい!」という気持ちが強くなってきた。子育てや教育、精神科看護、保育に携わる仕事に就いてみたいという目標ができた。これは人と本との出会いから育まれたものだ。