マーラーの交響曲第3番

マーラー交響曲第3番の響きは、不可思議な光に包まれている。禅のリズムでとてつもなく繊細だ。曼荼羅道元の『正法眼蔵』の世界観を現成させているようでならない。マーラーの神経的な苦悩を驚くべき密度で表現している。まるでお花畑を歩いているような心持ちになってしまいそうなメロディーが後半に展開されている。
 神経衰弱におちいったときにはこの曲を聴くと良いかもしれない。フルートの響きが重く、そして美しく広がりをみせている。前半部の劇的な主題には驚かされ、私はある種の「とっつきにくさ」を感じたが、後半部になるにしたがってマーラー独自のジューイッシュ的なデーモン性を発揮し、ここちよい心持ちに聴衆をいざなう。マーラー交響曲は、フルートやピッコロそしてホルンが緻密な曼荼羅を描いている。